再々々開その2

生まれたときには、バブルは弾けていた。 世間の「まだいける」な気分や、遅れてできてくる建築など、余韻は微かにあったらしい。しかし物心つく頃にはもう、みんな夢から醒めていたようだ。肩パッドをいからせた人たちの群れとか、記憶に無い。たまに見かけ…

再々々開その1

職場と、職場の最寄駅との間に、幅数十メートルの川がある。仕事の行き帰りで毎度、橋から水面を眺めるのだが、いつも風にさざめくだけで流れがない。水門のおかげということらしい。岸辺も整地されつつ草木が残されており、人為的ながら都会のオアシスとい…

再々開その4

普遍的にある残酷な現実。それを理解する時期は、自分の場合は小学校1・2年頃だったように思う。死という概念の存在、戦争の事実。知ったときの衝撃は胸に大きな穴を開けた。隙を見せれば今でも顔を出す恐怖、これから先も、この恐怖と連れ立って行くんだ…

再々開その3

ゆうパックの内勤バイトをしていた頃。集配員の中に虚言を吐く人がいた。高倉健とタメ張れる人がこんなところで2トン車転がしてる訳がない。そう思いつつ、嘘でもそんな話を聞けるのは面白いなと思った。 そのオジサンは、言うなれば孤高の人…つまり周りか…

再々開その2

梅や桜の話をしたくなったのは、花を見る度に思い出すことがあるからである。 高1の3学期の終盤、昼に学校が終わって早く家に帰った日。我が家は団地の3階、午後の安らかな陽光にベランダへ出てみると、眼下の生け垣の梅がキラキラと輝いていた。花弁の薄…

再々開その1

やはりと言うべきか。自分の三日坊主癖は相当なもののようで、呆れを超して、もう笑うしかないというレベルである… しかし、それは元々わかりきっていたこと。三日坊主をして、その後どうしていくかが問題である。このまままた何ヶ月も何年も放っておくのか…

再開その4

大型電気量販店にある時計売り場が好きである。特に掛け時計や置き時計のコーナーは格別だ。突き詰めたシンプルさや、あるいは生活を邪魔しない程度の装飾を施した時計たちが、買われた後は徐々に失っていくであろう自己主張をこの場では大いに発揮して、僕…

再開その3

僕の悪い癖として、向けられた言葉をその場では丸々真に受けてしまうというところがある。特に悪いのは、時間が経ってからその言葉の本意について疑念を抱いてしまう点だ。受けた瞬間はあまりに素直に受け取ってしまうから、じわりと募り募ってゆく疑心暗鬼…

再開その2

何年か前、疲れて帰った道すがら、いつも使っていた地下鉄の駅で気がついた。 その駅のホームは床が白いタイル張りだった。タイルは艶消しになっていて、無数の小さなレキでできていた。レキは大方色が揃っていて、どれかが目立つという事はなく、しかしそれ…

再開その1

年末年始は何かと気持ちが焦ってしまって、良い言い方をすればそれは何かを始められたり再開できたりということなのだけれど、大体においてそのモチベーションを早々に切らしがちで、そしてまた巡ってくる年の暮れ、僕はまた頭を抱える。 こんなことを何度も…

平成30年3月26日 深夜

晴れているはずなのに夜空に星は見えず、月だけが黄色く弱く光っている。街灯はぼうっと輝き、同時に道路標識が妙に目についてくる。車通りの少ないこの時間帯、標識は本来の意味を持て余し、形や色を閑散とした闇の中で主張している。僕はそれを八分咲きの…